スマホソフトウェア競争促進法（スマホ新法）とは？格安SIM・格安スマホ時代に広がる選択肢と注意点

最終更新日: 2025/10/13

2025年12月18日に全面施行される予定の「スマホソフトウェア競争促進法」について解説！

スマホソフトウェア競争促進法（スマホ新法）とは？格安SIM・格安スマホ時代に広がる選択肢と注意点

概要

最近、「スマホ新法（スマホソフトウェア競争促進法）」という言葉を目にする機会が増えたかもしれません。特に、格安SIMや格安スマホを使っている方、あるいはアプリを開発・提供している事業者の方にとっては、「自分にどんな影響があるのだろう？」という不安や期待があると思います。

「アプリの決済手段が選べるようになるって本当？」「iPhoneでも他のアプリストアが使えるようになるの？」といった疑問も出てくるでしょう。本記事では、通信業界を見てきた立場から、この法律がもたらす変化を整理し、あなたが知っておくべきメリット・デメリット、どんな人に追い風となるかを具体的にお伝えします。

最後には、あなた自身や事業者が取るべき次のステップも提案しますので、ぜひ実務や購買判断の参考にしてください。

法律の概要説明

「スマホソフトウェア競争促進法」（正式名称：スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律）は、2024年6月に国会で成立し、2025年12月18日に全面施行される予定の法律です。

この法律は、スマートフォン利用において不可欠な「特定ソフトウェア」（モバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジン）を対象として、巨大IT企業（Apple、Google など）による市場支配や競争抑制行為を抑えることを目的としています。

具体的には、一定規模以上の特定ソフトウェア提供者を「指定事業者」として指定し、彼らに対して「禁止事項」と「遵守事項」を課し、違反すれば公正取引委員会が命令を出したり課徴金を科したりできるようにする法体系です。

なお、規制対象事業者の指定に関する規定は 2024年12月19日 に先行施行されています。

主な特徴

以下が、スマホ新法の主要な特徴です：

1. 指定事業者制度による「事前規制」

公正取引委員会は、特定ソフトウェアごとに一定の規模基準を満たす事業者を指定事業者とし、以後それらに対して法律上の義務を課します。

指定基準としては、例えば国内向け利用者数や提供規模などが政令で定められます。

2. 禁止事項の明示

指定事業者には、以下のような行為が禁止されます：

他の事業者がアプリストアを提供するのを妨げてはならない
他の課金決済手段を利用することを妨げてはならない
デフォルト設定を簡単に変更できるようにすること（選択画面表示義務など）
自社サービスを正当な理由なく優先表示してはならない（検索エンジン等）
取得データを競合事業者への優位に使ってはならない
アプリ事業者が OS 機能を利用することを妨げてはならない（ただし正当化事由あり）

これら禁止事項には、セキュリティ・プライバシー・青少年保護などの正当化理由が認められる場合も例外扱いされる可能性があります。

3. 遵守義務・透明性義務

指定事業者には、禁止事項とは別に、透明性・説明義務などの遵守事項が定められます。たとえば、データ取得条件、仕様変更、標準設定、移転可能性、申告義務などが求められます。

4. 実効確保策：報告・調査権限・課徴金制度

公正取引委員会は、指定事業者に対して遵守状況の報告を求めたり、情報提供を関係事業者に命じたりできます。

違反があれば命令、是正措置、課徴金（最高で売上高の 20％等）を科すことができます。

また、関係行政機関との連携も強化されます。

5. 技術変化への対応（見直し可能性）

本法は、将来的に改正・見直しを前提とする構造も予定されており、技術や市場の変化を反映しやすく設計されているという考え方があります（特定ソフトウェアの拡大も含めて）。

メリット・デメリット

読者や事業者視点で、わかりやすくメリットとデメリットを比較してみましょう。

観点	主なメリット	主なデメリット／注意点
ユーザー（一般消費者）	- iPhone 等でもサードパーティ製ストアを選べる可能性など、選択肢が拡大 - アプリ決済手段の多様化により料金競争が起こり得る - 透明性向上（仕様変更の通知など）で利用者の予見性が改善	- 非公式ストアや定義の曖昧なアプリ流通によるセキュリティリスク増加可能性 ([ソフトバンク][7]) - 利用環境によって、設定の切り替えが煩雑になる可能性
アプリ事業者（中小・新規参入者）	- 手数料・独占的決済制限の緩和で収益性改善の余地 - 新たなアプリストアや流通チャネルが登場しやすくなる - OS 機能へのアクセス制限が緩和される可能性	- 新規ストアとの競争コストや品質管理の負担が増える可能性 - 各ストア対応やセキュリティ基準整備が求められる
プラットフォーマー（Apple、Google 等）	- 信頼性やブランド力を武器に競争力を維持できる可能性	- 規制対応コストの増加（制度対応、報告義務、技術対応など） - 禁止行為に抵触した場合の課徴金リスク・ブランド毀損リスク

全体として、「市場の選択肢を広げて競争を促す」という趣旨には合理性がありますが、それに伴うセキュリティ面のリスクや制度運用の負荷をどうコントロールするかが鍵です。

既存サービスや商品への影響比較

この新法によって、現状の格安SIM／格安スマホ事業者、キャリア端末供給、アプリストア運営形態などにどのような変化が見込まれるかを比較的視点で整理します。

格安SIM・格安スマホ業界 　現時点では、格安SIM／格安スマホ事業者は、主に回線と端末・通信契約を提供する形態が中心です。アプリストアプラットフォーム自体を運営することは少ないため、直接的な規制対象とはなりにくいと考えられます。

　しかし、利用者が「スマホ端末で使える選択肢」を重視する傾向が強まれば、「どの端末／OSを使うか」が契約選択の一要因になる可能性があります。すなわち、格安スマホを選ぶ際の差別化要素として、“使えるアプリストアの多様性” が新しい比較軸になるかもしれません。

キャリア／大手端末メーカー 　iPhone や Android 端末を提供するメーカーやキャリアは、自社の端末と連携したアプリストア政策・課金政策を見直す必要が出てきます。たとえば、従来「自社ストアへ誘導する」「自社決済を強制する」ような仕様変更は、新法で禁止または制限される可能性があります。
アプリストア提供者（Apple App Store, Google Play など） 　もっとも直接的な影響を受けるのは、App Store や Google Play のような既存ストア運営者です。　具体的には、手数料政策、入手方法制限、審査基準・表示順制御、仕様変更の告知義務など、幅広い面で制度適応を迫られるでしょう。　また、新法が許すサードパーティストア運用者との競争環境下で、差別化（セキュリティ保証、信頼性、UI/UX、エコシステム統合など）が重要になります。

どんな人・事業者にとってメリットか

以下は、この法律施行後に特に恩恵を受けやすいと考えられる「ペルソナ別例」です：

ペルソナ	主なメリット	補足・注意点
iPhone ユーザー（特にキャリア縛りやApp Store限定に不満を持つ人）	他のアプリストアを選べるようになる可能性、アプリ決済手段の自由化	ただし、利用できるストアが安全基準を満たすか、サポートが整備されるかに注意
格安スマホ選び重視のユーザー	実質的な “選択肢拡充” によって、機種・OS の選定幅が広がる可能性	安心して使えるストアを選べるかどうかが鍵
中小アプリ開発者・新規参入企業	手数料の低減や流通チャネルの多様化、参入障壁の低下	新ストア対応やセキュリティ基準対応の負荷増加も見込まれる
現在のアプリストア運営者	自社ブランド信頼性・セキュリティ強化を武器に差別化の余地	規制順守コスト・制度対処力強化が不可欠
大手IT企業（Apple、Google 等）	ブランド力・ユーザー基盤を活かした競争で利益維持可能性	規制違反リスクを避けつつ、柔軟性を保つ戦略が求められる

よくある質問

Q1. スマホ新法は iPhone の App Store 独占を完全に壊せるの？ A1. 完全に壊すわけではありません。法は「他社ストア提供を妨げてはならない」「選択画面の提示義務」などを定めていますが、技術的・安全性理由がある場合、例外的な制約は許される可能性があります。

Q2. Android（Google）にはどれくらい影響がある？ A2. Android では現状、公式ストア以外からのアプリインストールが技術的に可能ですが、新法後はそのプロセスや表示順・推奨方式などに制約がかかる可能性があります。また、Google が自社サービス優先表示を行ってきた慣行が見直される可能性もあります。

Q3. 格安SIM／格安スマホ事業者に直接影響はある？ A3. 直接の規制対象とはなりにくいですが、ユーザー選択の拡大という文脈で、端末・OS の選定自由度が増すと、格安スマホ提供者もそれを提供価値として訴求できるようになる可能性があります。

Q4. セキュリティ面で心配がある。マルウェア増加のリスクは？ A4. その懸念は妥当です。公式以外のストアやアプリ流通が拡がると、十分な審査・更新管理がされないアプリが混入するリスクがあります。実際、SoftBank 側もこうしたリスクを指摘しています。([ソフトバンク][7]) そのため法律やガイドラインでは、セキュリティ・プライバシー確保の観点からの例外許可や例外制限が想定されています。

Q5. 新法違反でどのくらい罰則があるの？ A5. 違反が認められれば是正命令・措置命令・課徴金が科される可能性があります。課徴金率としては、指定事業者に対して売上高の最大 20％を上限とする制度が想定されています。

まとめと行動促進

スマホソフトウェア競争促進法（スマホ新法）は、格安SIM・格安スマホ時代におけるユーザー選択肢拡大やアプリ市場の活性化を目指す画期的な制度です。2025年12月18日の全面施行により、これまでのプラットフォーマー独占構図が変化する可能性があります。

ただし、競争促進の影響でセキュリティリスクも増す可能性があるため、法律やガイドラインの運用状況を注視することが重要です。特に、端末・アプリ提供者・利用者それぞれにとってのリスク管理が鍵を握ります。

ユーザーとしての準備事項：

利用者として 　– どのストアを使うか、セキュリティ・信頼性を重視した選択肢を検討　– 新ストア導入時にはレビューや安全性情報をチェック
アプリ開発者・提供者として 　– 新たなストア対応可能性を調査・準備　– セキュリティ基準・更新体制を強化　– 規制対応（報告義務、仕様開示義務など）に備える
プラットフォーマー（あるいはその関係者）として 　– 規制内容と禁止事項の精査・リスクチェック　– 差別化ポイント（信頼性、UI、サポート、独自サービス統合性など）の強化　– 公正取引委員会・指針・政令の動きを継続モニタリング